~Cコードの違う矢を混ぜて射ってはだめですか? Part 1

投稿:2022年12月11日

実はCコードが違うシャフトを混ぜて射っても、隣り合ったコード(例えばC2とC3、C6とC7のように1番違いの場合)なら問題はないというのが定説です。「Cコードが違うと重さが違うからサイトが変わる」とか「C2が一番精度が高い」とか「Cコードによってスパインがが若干違う」などといった都市伝説のような話を耳にすることがありますが、そもそもCコードが意味するものが何なのか、そしてそれがパフォーマンスにどう影響するのかについて正確に理解されていないように思います。そこで今回は元イーストンの主任エンジニアで、X10シャフトの開発にも携わったジョージ・テクミチョフ氏によるウエイトコードについての解説を紹介します。


X10のシャフトには写真のように906 A/C/X10・410・SERIES Aなどとマーキングされています。

「906」はアルミニウムコアのサイズを表しており、最初の一桁がコアの外径(9/64インチ)、残りの二桁がコアの肉厚(6/1000インチ)を表しています。ちなみにX10シャフトには全て同じ906サイズのアルミコアが使用されています。

「A/C/X10」はモデル名でアルミニウム/カーボン アローのX10というモデルという意味です。

「410」は矢の硬さ(スパインの値)を表しており、数が大きいほど軟らかく、数が小さいほど硬いということになります。

「SERIES A」というのはシャフトの世代を表しており、素材やその他の仕様に何らかの変更が加えられた場合に別のシリーズコードが割り振られます。シリーズの変更はごくまれ(10年に一度あるかないか)で、しかもアローシャフト自体の性能にはほとんど関係ないものです。異なるシリーズのシャフトを混ぜて射ってもグルーピングに影響は出ることはほとんどありません。

レーザー刻印されたシリアルナンバーとウエイトコード

モデル名などとは別にレーザー刻印で8桁の数字とC1、C2…などのアルファベットと数字を組み合わせたマーキングが入っています。8桁の数字はシリアルナンバーで、Cで始まるマーキングが「ウエイトコード」といってシャフト重量の分類コードなのです。

ウエイトコード
X10のシャフトには写真のように、レーザー刻印されているのがシリアルナンバー(生産ロットを識別するためのもの)とウエイトコードです。写真のX10の場合、ウエイトコードはC2と表記されているのが見えます。イーストンでは何千本ものシャフトが造られる生産ロット毎に、最終的なスパインチェックが終わった段階で全てのシャフトを個々に重量を計測して重量分布のチャートを作成しています。ひとつのサイズ(スパイン)の一回の生産ロットで製造される何千本ものアローシャフトの中で最も軽い個体と、最も重い個体の重量の差はおよそ5~6グレイン(0.320~0.384グラム)で、これらのシャフトが個体差1グレイン(0.064グラム)以内の7つのグループに分けられてそれぞれにウエイトコードが与えられます。C2というのはそのグループの一つを表しています。

さらに1ダース毎にパッケージされる際には、より精確な重量分布の補正が行われています。ウエイトコードで管理されている全てのイーストンのプレミアムモデルの競技用シャフト、ACE、X10、X10プロツアーシャフトの重量分布の範囲は1.5グレイン(0.097グラム)内であり、販売されている1ダースのパッケージ内のシャフトの重量誤差は+-0.5グレイン(0.032グラム)に収まっています。

ウエイトコードはスパインの均一性のためにある
結論から言ってしまうと、シャフト重量を分類している目的は「スパインを均一にするため」ということです。フィンガーリリースするリカーブボウの場合、スパイン以上に重要な要素はありません。使用する一本一本のシャフトのスパインが全て均一であることが、矢の集中性(的上でどれだけ小さくグルーピングするか)の要なのです。スパインがなぜ重要かという点については、アローシャフトがリカーブボウから射ち出される際の動きを見たらその理由は一目瞭然です。毎回同じようにグルーピングするためには、全てのアローシャフトが同じようにしなることが求められるのです

リリース時に矢がしなる様子(Beiterのハイスピード映像より)


スパインの重要性
ほとんどの人が「スパインの均一性」がスコアを左右するとなんとなく感じていると思いますが、それがパフォーマンスに与えている影響の大きさを具体的に知っている人は少ないかもしれません。テクミチョフ氏によるとトップアーチャーによる実射テストで、イーストンの規格で作製された均一なスパインの矢とイーストンの規格に満たない規格(スパインのばらつきのある)矢では明確に差があったとのことです。70mで規格を満たした矢と規格外のスパインのばらつきのある矢で、6週間にわたって70mを射ってデータを集めたところ、12射ごとの合計スコアの平均でみるとスパインが均一なシャフトと均一性が規格外の矢では2点高の差がつくという結果でした。

スパインの均一性といえば、シャフトの360°全周方向でスパインの値が均一であることも重要!

2点の差の意味
2点というのは、12射の合計スコアで勝敗を決していたころの国際大会やオリンピックのマッチ戦の約80%の試合の勝敗を分けたスコアの差です。現在のセットポイント制のマッチ戦でも、2点の差が勝敗の分かれ目となることは十分考えられます。それほどスパインの均一性が、アーチェリーのパフォーマンスにとって重要だということです。

スパインを均一にすることとシャフトの重量を分類して任意のウエイトコードを付けることがどう繋がっているのかについては、次回のブログで解説していきます。