~ドローイングし続けていれば自然にリリースできる理想のリリーサー⁉

投稿:2022年3月4日

こんにちは、渋谷アーチェリー世田谷店の種部です。

 今回は、もしかすると最近静かなブームを呼んでいる?レジスタンス・アクティベート方式のリリーサーについて解説していきます。別名「トゥルーバックテンション」リリーサーとも呼ばれるレジスタンスリリーサーですが、原理は簡単で、Dループをかけているフックに一定以上の力が加わるとシアーがはずれて発射されるというものです。例えば使用するコンパウンドボウのホールディングウエイトが12ポンドだとすると、4~5ポンド強い抵抗(14~15ポンド)で作動するようにセッティングしておくと、フルドローして安全装置を解除してエイミングしながら伸び合いを続けていると自然に発射されるという仕組みです。

 20年以上前にアメリカの元トップリカーブアーチャー、ジェイミー・レッシュ氏が商品化したのが最初だったと思います。当時何個か仕入れて販売した記憶がありますが、キワモノ的な扱いだったように思います。レジスタンスリリーサーが広く認知されるようになったのは、カーターのエボリューションというモデルからでしょうか。まあ、今でもトップシューターでレジスタンスリリーサーを使用している選手はあまり見かけない(ワールドカップなどで活躍している中ではエストニアのリセル・ヤートマ選手くらいでしょうか)ので、今もマイナーなモデルと言えるかもしれません。

LISELL JAATMA(ESTONIA)  PHOTO COURTECY OF WORLD ARCHERY

 ヒンジ方式のトリガーレスリリーサーとの大きな違いは、ヒンジリリーサーがハンドルの角度の変化で作動するのに対して、レジスタンスリリーサーはその名の通り抵抗の強さで作動するので、ハンドルを回転させて角度を変えるなどの操作をする必要がない=ただ引っ張っていれば良い、という点です。

 個人的にはホールディングしている状態で引き手を動かすのがとても苦手なので、これまで何度かヒンジリリーサーに挑戦したのですがなじめませんでした。コンパウンドボウを始めて以来一番長く使用しているのは親指トリガーのカーター【ジャストビーカズ】で、全日本選手権で優勝した時も世界選手権に出場した時もこのリリーサーでした。親指トリガーリリーサーは親指でトリガーを押すじゃないか、と思われるかもしれませんが、トリガーに親指をかけてただドローイングし続けているだけで射っています。実はコンパウンドを始めて割と早い時期にひどいターゲットパニックになったことがあるので、親指でトリガーを押すことが怖くてできません。もう20年以上、どんなに時間がギリギリでも、どんなに風が吹いていても、トリガーを押したり絞ったりしたことはありません。トリガースプリングを硬めにしてトリガートラベル(シアーが外れるまでにトリガーが動く角度)をほぼゼロに設定することによって、トリガーにかけた親指を動かさないでただ引っ張れば切れる状態にして射っています。

 これと同じ状態が作れるのがレジスタンスリリーサーです。ただ引っ張って荷重をかければ良いので、ホールディングした状態でリリーサーを操作する必要がないというのが魅力です。再現性の高い理リリースをするカギはリリースすることを意識しないでリリースすることにあると思います。

雨露の離れ

 リリーサーの切り方についてはいろいろ流派があるかもしれませんが、ただ引っ張っていたら矢が飛んで行ったという状況を作るのが、一番ストレスが少なく当てる方法だと思います。葉にたまった朝露が自然に葉から滑り落ちるような、いわゆる弓道で「雨露の離れ」と表現される状態です。ドットを的の真ん中につけてトリガーを切る、というのではなく、トリガーが切れるまでにドットが的の真ん中に来ればいいなー、ぐらいの感覚ですね。

カーター アトラクション(レジスタンス)とジャストビーカズ(親指トリガー)

 そんなんじゃ当たらないと思われるかもしれませんが、意外に当たります。そして何よりもストレスが少ない=楽に射てるのです。そんなストレスの少ない射ち方をマスターするのに良いと思われるのがレジスタンスリリーサーです。ホールディングして安全装置を解除したら、あとは的を見ながらただ引っ張っているだけで良いのですから、無意識にリリースすることが可能になります。

ただ引き続けるだけ、ドットを止めようとするのではなくドットの動きを観察する

 練習のやり方としては、作動設定を少なくとも5ポンドくらいホールディングウエイトよりも高く設定しておき、ホールディングしてロックを解除したらただ待当てたいと思うところ(もちろん的の中心ですよね)を見ながら、伸び合い続けるだけです。この時ドットを止めようとしないで、ドットの魚喜を観察するような気持で的を見続けることが重要です。ドットが的の真ん中になくても気にしないで、リリーサーが作動するまでドローイングし続けます。ドットが的の真ん中にない時…例えば8点にある時にリリーサーが切れて矢が8点に当たったら、狙ったところに当たったということで何の問題もありません。もちろんドットが的から外れるぐらいずれるような時は引き戻してください。しばらく練習していると、ドットが動いている範囲よりも内側に矢が当たる傾向があることに気が付くと思います。ハイスコアが出るかどうかは、ドットの動きの範囲が小さく一定かどうかとリリースまでのタイミングが一定かどうかの問題で、これは練習を続けているうちにだんだん小さく一定になって行きます。私はこの練習を親指トリガーリリーサーでやっていましたが、それまでのトリガーを押したり絞ったりして切る射ち方よりもストレスが少なく、グルーピングも良くなりました。親指トリガーだと「ドットが真ん中に来た瞬間にトリガーを押したくなる」衝動に負けてしまうという人も、レジスタンスリリーサーなら強制的にドローイングし続けなければならない状態を作ってくれるので、効果的に無意識のリリースをマスターすることが可能になると思います。

安全装置をレバーを押して解除するタイプか、レバーを離して解除するタイプか

 気をつけなけれならない点は、レジスタンスリリーサーには安全装置を解除する方式がレバーを押し込んでロックを解除するタイプと、レバーを押した状態でロックされるタイプ(レバーを離すことでロックが解除される)の2種類があるという点です。私が初めて使ったレジスタンスリリーサーは上の写真のカーター アトラクションでした。これはレバーを押し込んでロックを解除するタイプだったのですが、実際に使ってみるとアンカーにつけてからレバーを押すことが怖くてできなかったのです。結局、強さをホールディングウエイト以下にセットしてロックを解除したら同時に発射される状態=親指トリガーと同じ状態で使用していました。

 何年もたってからスタンのパーフェックスの親指トリガーモデルを使い始めた時に、同じ形でレジスタンスリリーサーがあったので再度トライしてみました。スタンのパーフェックスレジスタンスモデルは、レバーを離してロックを解除するタイプだったので、使ってみる気になったのです。動作としてはヒンジリリーサーを使うのと同じで、はレバーに親指をかけて押さえた状態でドローイングし、アンカーリング後親指をレバーから離して引き続けるというものです。これは快適でした。

スタン パーフェックスT(親指トリガー)とパーフェックスR(レジスタンス)

 ただ、作動するタイミングがかなりばらつきがあるように感じました。すぐに切れる時とホールディングの限界を超えるくらい切れないときがあったのです。ポンドスケールで測ると、作動する強さは毎回ほぼ同じなので、カムが回り切った時に射ち手がどのくらいのテンションでホールディングいているかがばらついているからだと思うのですが、実際にエイミングしているときは疑心暗鬼になってしまうものです。

 ジェシー・ブロードウォーター選手が自身のシグネチャーモデルのレジスタンスリリーサーの宣伝でコメントしていたのですが、実際にホールディングしているときに弓にかかっているテンションを測定しながら練習すると、リリーサーは毎回同じテンションで作動しており、ホールディングした時の自分のテンションのばらつきが原因で作動タイミングのばらつきが生じていたそうです。

 ということはレジスタンスリリーサーを使って練習して、一定のタイミングで射てるようになると、ホールでイング時のテンションの再現性が高まるということではないでしょうか。そういうトレーニングツールとしても有効だと言えそうですね。

 長くなってしまったので、おすすめのレジスタンスリリーサーについては次回に回します。

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