~ジェシー・ブロードウォーター選手のシンプルコンパウンドチューニング(イーストン ターゲットアーチェリー ポッドキャスト シリーズ)

投稿:2023年3月26日

もうすぐ新年度が始まりますね。新しいアウトドアシーズンに向けて弓のチューニングはだいじょうぶでしょうか?日本でもおなじみジョージ・テクミチョフ氏がホストを務める【イーストン ターゲットアーチェリーポッドキャスト】にアップされたものの中からコンパウンドボウのチューニングに関するものを取り上げていきます。第1回はジェシー・ブロードウォーター選手のチューニング法です。

フィールド、ターゲット、インドア、3Dとあらゆる種目でトップクラスのジェシー・ブロードウォーター選手

難しく考えない
私のチューニング方法はみなさんが考えているよりもずっとシンプルなものだと思います。昔はカムはまっすぐであるべきとかスコープやレストが弓の中心にあるべきとか、いろいろこだわっていました。経験を積んで、良いグルーピングを出すために気にすべきことと気にしなくても良いことが何かわかってきたので、今はグルーピングが良ければ、カムの傾きやセンターショットの位置などがどうであれ問題にしません。結局(チューニングで)一番重要なのは、矢がグルーピングすること、ミスに対して寛容であることなのです。

ジェシー・ブロードウォーター選手はHOYTストラトスHBTカムモデルを使用

初期設定は目分量
ノッキングポイントやレストのセンターショットの初期設定は、だいたいこのくらいという位置で合わせます。 ノッキングポイントはバーガーホール(レスト取付用ネジ穴)の中心にシャフトの下側が来る高さで、矢がストリングと直角になるような位置にだいたい合わせます。センターショットもだいたい目分量で弓の真ん中あたりに合わせておきます。

スタビライザーは経験的に30インチとカウンターに15インチという組み合わせで、ウエイトはセンターが7、8オンス、カウンターは12~15オンスというセッティングにしています。引き尺と引いた感じに問題がないか確かめてから、チューニングを始めます。

グループチューニング
初期設定を終えたら、まずペーパーを射って矢の出方をチェックすることがあります。ペーパーチューニングでは完璧なブレットホール(まっすぐに抜けた穴の開き方)を求めていません。3インチも右下向かって裂けるような破れ方をしたら問題ですが、だいたいまっすぐに穴が開けば問題ありません。

次にグループチューニングを行います。アウトドアシーズンの場合は90~100ヤード(82~91メートル)でレストの(上下・左右)を少しずつ動かして、グルーピングが最も小さくなるよう調整します。グループチューニングは、自分の射の感覚と矢が的中する位置の関係がわかっている最も長い距離で行います。100ヤードというのが私にとって射の感覚と的中位置が一致する最も長い距離で、200ヤードになるとちょっとわからないですね。風が吹いていない日に、自分が自信を持って射てる(射の感覚と的中位置が一致する)距離で行うと良いと思います。

グルーピングが一番小さくなったところがチューニングが(自分の射ち方に)合った状態

自分が普通に射った時のグルーピングの大きさの感覚があると思いますが、例えば今の射ち方は6時方向の9点とか、1時方向の7点とかいう感覚です。グルーピングの外に出る矢がある場合、射ち方の感覚と的中位置にずれがある場合は、ミスに対して寛容ではないセッティングと言えるので、レストを上下・左右いずれかの方向を選んで、1/16インチずつ動かしてグルーピングが小さくなるか試してみます。レストを動かしてグルーピングが小さくなれば、よりミスに寛容なセッティングなったということです。

場合によってはレストの上下・左右の調整だけでなく、リムボルトでピークウエイトを変えてみたり、ティラーバランスを変えてファインチューニングすることもあります。

インドアチューニング
インドアはアウトドアよりも時間がかかります。100ヤードでインドア用の太いアルミ矢を射ってグルーピングを見るわけにはいかないので、18メートルでグルーピングのデータを取るのですが、距離が近いと変化がわかりにくいので時間がかかります。ちょっと調整しては1週間くらい射ち込んで、またちょっと調整しては1週間くらい射ち込むという感じでチューニングを詰めていきます。

アロースパイン
私はイーストンのシャフト選択チャートで見ると、かなり軟らかいスパインの矢を使用しています。弓の仕様がピークウエイト60ポンド、引き尺28.5インチでプロツアーの520番はかなり軟らかい、常識的には軟らかすぎるサイズと言えます。ただ実際に射ち比べてみた結果として、私にとっては520番の方が420番や470番よりもグルーピングが良いので、私には合っているということです。

コンパウンド専用に開発されたフロントテーパー形状のイーストン プロツアー

ベアシャフトチューニング
最もグルーピングが小さくなるセッティング(ミスに対して寛容な状態)に調整した後で、はじめてベアシャフトチューニングを行います。グループチューニングが完了した状態では、18メートルでベアシャフトが羽根付きの矢の6時方向1インチ下に刺さります。これが私にとってチューニングが合っている時のベアシャフトの位置ということです。シーズン中にグルーピングが広がったり、射った感覚と的中位置がずれていると感じたりした時は、18メートルでベアシャフトの的中位置をチェックします。もしずれていたらレストをいじってベアシャフトがいつもの位置に来るように調整することで、簡単にチューニングを直せます。

ノックフィット
私はノックフィット(ノックのセンターサービングへの嚙み具合)が緩い方です。矢をストリングにつがえた時にセンターサービング場を上下に簡単に動かせて(もちろんノッキングポイントやループを取り付ける前の話です)、左右も若干遊びがあり、軽くストリングをはじくとストリングから外れるくらいだそうです。もちろん引き戻しした時にノックが外れない程度のテンションは必要。イーストンのGピンノック(ラージグルーブ)に対して、センターサービング部分の太さは0.107インチ(約2.7ミリ)になるようにサービングを巻いています。

ジェシー・ブロードウォーター選手監修のGASフリークショウストリングセットはセンターサービングの太さが選べます。

ランチャーブレード
矢はプロツアーで.008のブレードを使用しています。私が使用しているAAEフリークショウQDレストには長いランチャーブレードと短いランチャーブレードのオプションがありますが、基本的に.008のブレードで長さを変えて試すことはありますが、硬いブレードは使いません。矢の重量から考えて、それより硬いブレードを使う必要性を感じたことはありません。プロツアーのような極小口径のシャフトではベインがランチャーブレードと接触する可能性を完全に無くすことはできないので、ブレードが柔らかい方がベインが当たった時の影響が最小限に抑えられると思います。

AAEフリークショウQDレスト

以上が非科学的に思われるかもしれませんが、私がが最も効果的だと考えているチューニング法です。弓のセッティングはこうあるべきだという理想を追い求めてちまちまと弓をいじっているのは時間の無駄だと思います。実際に距離を射って矢がグルーピングするかどうかが問題で、そのほかのことは気にしなくても良いということを理解しました。スコアカードに記入するのは、結局のところ矢の的中位置だけなのですから、グルーピングしたらチューニングは完了です。

【イーストン ターゲットアーチェリー ポッドキャスト】から、次回はミスターパーフェクト、マイク・シュルッサー選手のチューニングについて取り上げる予定ですのでお楽しみに!