用具・基本スタイル

Archery Equipment

アーチェリーの用具

弓のスタイル

ロビンフッドの時代は一本の木材を削ってつくった弓に絹糸や動物の腱などから作られた弦、木の矢が使われていました。 今では航空機のアルミニウム合金、カーボン、高分子ポリエチレンなどのハイテク素材で作られており、矢をより速く、正確に飛ばすことができるようになっています。 現在アーチェリーの弓には、大きく分けてリカーブボウ、コンパウンドボウ、ベアボウの3つのスタイルがあります。

1)リカーブボウ

オリンピック競技にも採用されるスタイル。 リムという板状のパーツをしならせることでエネルギーをためて矢を飛ばすという、弓の原形を保ちながら、照準器(サイト)や振動を抑え、弓のバランスを保つスタビライザーなどの的中性を向上させるアクセサリーを取りつけて使用します。日本国内では、小中学生からもスタート出来るもっとも競技人口が多いスタイルです。

2)コンパウンドボウ

リムの先端に取り付けられた滑車の働きによって、リカーブボウの1/3程度の負荷でホールドすることができるのがコンパウンドボウです。また、発射装置や照準器に倍率のついたレンズを使用することが出来るため、リカーブボウと比較すると的中性能が非常に高いスタイルです。アメリカやヨーロッパでは最もポピュラーなスタイルで、体への負荷が少なく日本国内でも近年急速に人口が増えています。オリンピックには現在採用されていませんが、世界選手権等の多くの国際大会でリカーブボウと同様に開催されています。

3)ベアボウ

弓本体はリカーブと同じものを使用しますが、照準器(サイト)やスタビライザーを使わないスタイル。弓の原形に近い形で競う為、最も的中精度が低いスタイルといえます。長年フィールド競技のみ正式種目として扱われていましたが、近年ターゲット競技にも正式に追加されました。用意する道具は他スタイルより少ない為、今後競技人口の増加が期待されています。

何を揃えたらよいですか?

プロテクター類

プロテクターや矢筒(クィーバー)等は、体験するだけであれば、貸し弓具があるシューティングレンジでは弓とセットになっている場合があるので、そろえる必要はありません。
初心者教室やクラブチームに入り、中長期で取り組む場合には自分の体に合うサイズのものをショップで選び、揃えておきましょう。

弓・矢

弓や矢に関しては、自分のフォームに合ったサイズ、強さのものを選ぶことが非常に重要です。 また、どういう競技をメインにするかによって、必要な道具・装備も異なります。初めはクラブやレンジの貸し弓具を使って、 基本的なテクニックやフォームを学び、ある程度の強さの弓が引けるようになってから、興味のあるスタイルを決めて、マイボウを揃えると良いでしょう。
リカーブボウ セット

ビギナー用セットで、3万円前後から、競技用のベーシックなものなら10万円前後からそろえられます。アーチェリーの道具は、ゴルフやスキーの道具と同じで、最初からトップレベルのもので揃えたいという考え方もあれば、 最初はできるだけコストを抑えて、上達にあわせてグレードアップしていくという考え方もあります。
オリンピックに出ても恥ずかしくないような最高級レベルのものだと、一式で30~50万円くらいになります。

大学のクラブなどで競技として取り組む場合、初めから競技用クラスのものをそろえた方が、途中で物足りなくなったりして買い換えなくても済みます。 高校生や中学生の場合、身長が大きく変わる可能性もあるので、最初の弓はビギナー用のものにして、 レベルアップとともにグレードの高い物に買い換えた方が良い場合もあります。あまり練習時間が取れない社会人の方やレジャーとして楽しむ場合であれば、 体力的な負荷の軽いコンパウンドボウや比較的お手頃にそろえることが出来るベアボウがおすすめです。

用具選びのポイント

基本的なテクニックをマスターして、弓の基本的な使い方を覚えたら、そろそろマイボウの購入を考えてもいい時期です。
コンパウンドボウ セット
ベアボウ セット
アーチェリーの用具選びでもっとも大切なことは、自分のフォームや体力・体格に合ったものを選ぶことです。どんなに高価な道具でも、 自分に合っていなければその性能を十分に引き出すことはできません。学校のクラブなどで競技として取り組む場合は、 ある程度の強さの弓が引けるようにトレーニングして力をつけることも必要ですが、レジャーとして楽しむのなら、 無理して強い弓を引く必要はありません。また、自分に合わない道具を無理して使ってもなかなか上達しないので、楽しむこともできないでしょう。
自分に合ったアーチェリー用具を見つけるには、アーチェリーショップのスタッフに相談しながら決めるのが一番確実です。 アーチェリー専門のショップなら、適した道具の提案、調整法や正しい取り扱い方法なども教えてくれます。
また、シューティングフォームなどのテクニックの相談にも答えてくれるところもたくさんあります。 メンテナンスが必要になったり、万が一故障した場合も、購入したショップに持っていけば調整や修理・交換など親切に対応してくれるはずです。
でも、どんなことを聞けばいいのかわからない、というビギナーのために用具選びのポイントを紹介します。

マイボウを選ぶ上でのポイント

弓はいろいろなメーカーから、いろいろなデザインやカラーリングのものが出ていて、自分が気に入ったものを選ぶのが一番ですが、以下の3つのポイントを踏まえた上で、好きなデザインやカラーを選ぶとよいでしょう。

強さ

これはストリングを引っ張る時の弓の抵抗の強さのことです。 普通同じ初心者といっても、人それぞれ体型も違うし、体力も違います。したがって、 引ける強さや引ける長さ(引き尺)も、人それぞれ違います。自分の体力にあった、 無理のない強さのモデルを選ぶことが非常に重要です。

引き尺

引き尺に応じて適正な弓のサイズ(長さ)があります。引き尺の短い人が長すぎる弓を使った場合、 引いた感じはやわらかく引きやすくなりますが、スピードが出ません。 逆に引き尺が長い人が短すぎる弓を使った場合、スピードは速くなりますが、 引いた感じが硬くなってしまいます。

重さ(質量)

重量が重すぎる弓では、正しいフォームを身につけるのが難しくなってしまうので、 サイトやスタビライザーなどのアクセサリー類をつけた場合のことも考えて選ぶ必要があります。

Point

競技種目によって違う弓具選びのポイント

リカーブボウ

弓本体 ハンドル ハンドル 材質:
ハンドルは大きく分けるとマグネシウム合金の鋳造か、 航空機などに使用されるようなアルミニウム合金の削り出し加工の2種類があります。 競技用のものは、現在ではアルミニウムのものが主流ですが、 マグネシウムの鋳造ハンドルも軽くて扱いやすいので、ビギナーには人気があります。
ハンドルの重さは、メーカー/モデルによって大きく異なります。 最近の競技用のトップクラスのモデルは重量が重くなる傾向にあります。
機能:
最近の競技用のモデルでは、上達に合わせてリムを交換することなく、 少しずつ強くしていくことができるポンド調節システムやリムのバランス調節システムを備えたものが一般的です。
リム リム 材質:
リムは、ベーシックなものはハードウッドの芯材にグラスファイバーを貼りあわせたものが一般的です。
グレードの高いものは、リムを構成する素材にカーボンを使用して反発力を高めてあるため、 より軽いポンドで、より早く矢を飛ばすことができるようになっています。リカーブリムの場合、 グレードによって、引いた感じや矢のスピードに大きな違いがあります。
簡単に言えば、同じ強さ(表示ポンド)のリムで比較した場合、グレードの高いリムの方がより速く矢を飛ばすことができるということが言えます。
プランジャー 値段による性能の決定的な差はありませんが、高いものの方が調整する時の操作性がよいといえます。
レスト プラスチックの一体成型のものから、矢を乗せるアームの部分を微調整できるものまでいろいろなデザインがあります。初めはシンプルなプラスチックがお勧めです。
ストリング 矢に弓のエネルギーを伝える非常に重要なパーツです。自分の弓に合ったサイズのものを選びましょう。 初心者用としては、安価で比較的長持ちするダクロン(ナイロン)製のものが一般的です。競技用のものは、 高分子ポリエチレン系の繊維を使用しており、耐久性、安定性、スピードに優れています。
サイト サイト 上下・左右の調節機構が付いたものが一般的です。サイトは一度買ったらずっと使えるので、最初からある程度よいものを買っておいた方がいいでしょう。
スタビライザー スタビライザー 最初はセンターロッドと呼ばれる長いロッド1本でじゅうぶんです。上達に合わせて、Vバーなどを追加していくとよいでしょう。
アロー 競技会では、アルミニウムとカーボンのハイブリッドタイプのアローが主流ですが、 初心者用として最もポピュラーなのが、コストパフォーマンスに優れたアルミニウムアローです。 アルミニウムアローは精度も高く、競技にも十分使えます。矢は消耗品なので、上達に合わせてグレードアップしていくとよいでしょう。
ボウケース 丈夫な樹脂製のハードケースや移動に便利なソフトケースがあります。練習場までの移動手段や使い勝手を考えて、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。
ボウスタンド 弓は繊細なものなので、立てかけて置くなどはもってのほか。リムに余計な負担をかけないためにも、ボウスタンドに置くようにしましょう。
ボウストップ フィンガースリングとボウスリングの2タイプありますが、ボウスリングの方が安心感があります。
アームガード 腕にフィットするものを選びましょう。初心者には、プラスチック製のなるべく薄く幅が広いものがおすすめです。
チェストガード サイズが合ったものを選びましょう。ストリングがひっかからないように服をおさえるためのものです。サイズが合っていないとかえってじゃまになってしまうので、サイズやフィット感が重要です。

コンパウンドボウ

弓本体 ハンドル 材質は航空機グレードのアルミニウム合金削り出し加工のハンドルが主流になっています。コンパウンドの場合、ハンドルのデザインによって、スピードや使い勝手が大きく異なるので、使用目的に合わせて選ぶとよいでしょう。
リム リムに関しては安価なグラスファイバー製のストレートタイプから、リカーブ形状のラミネーテッド(張り合わせ)リムまでいろいろあります。コンパウンドでは、スピードに関してはリムのグレードによる差よりも、ハンドルやカムのデザインによる差の方が大きいといえます。
カム カムは、メーカー/モデルによってスピードや特性が変わります。また、カムのサイズによって引き尺設定が決まっているので、自分のフォームに合っているかどうかを最優先してください。
レスト サイトコンパウンドの場合、チューニングはほとんどレストで行うと言ってよいでしょう。値段によって精度に差があるわけではありませんが、高いものの方が調整が簡単で、使いやすいといえます。
サイト サイト コンパウンドはリカーブに比べると振動が大きいので、それに対応したサイトが必要になります。上下・左右の微調整機構は必須アイテムです。サイトは上級者向けの競技用のものの方が調整の際の操作性に大きな差があります。一度買ったら長く使えるので、最初からある程度いいものを買っておくのもよいでしょう。
スコープサイト スコープサイト コンパウンドアーチャーのほとんどが、レンズ付のスコープサイトを使用しています。レンズの倍率が高いほど的は大きく見えますが、その分エイミング中のドットの揺れが拡大されて見えてしまいます。エイミングが気になって、フォームがおろそかになりやすくなるので、初めは2、4倍くらいがおすすめです。値段による最大の違いはレンズの性能で、高い方が明るく、見やすいといえます。
ピープサイト ただ覗き穴があいているだけのものから、穴の部分を状況に合わせて変えることができるようになったものまでいろいろあります。初めは簡単なもので十分です。
スタビライザー スタビライザー

コンパウンド用のスタビライザーは、弓の姿勢を安定させるだけでなく、振動吸収も重要な役目です。液体、発泡材、粉末など、いろいろなタイプの振動吸収システムがあります。細いパイプをいくつか束ねたものも振動吸収効果が高く、人気があります。
リリーサー

スタビライザー
ハンドホールドタイプの
リリーサー

スタビライザー
リストタイプのリリーサー

大きく分けると、リストタイプとハンドホールドタイプに分けられます。リストタイプの方が比較的安価で、ライフルのようなトリガー式なので、トリガーを引いて射つというイメージが理解しやすいかもしれません。競技アーチェリーではハンドホールドタイプが主流です。
アロー 基本的にはリカーブと同じですが、コンパウンドの方が的中させやすいので、マイボウをそろえる時点ですでに的を外さなくなっていたら、競技でも使えるカーボンアローを選んでもよいでしょう。
クィーバー 矢取りのときなど、使っていない時にリリーサーを入れておけるポケットがついていると便利です。
ボウケース コンパウンドの場合、ストリングは張ったままで持ち運びます。ハードケースは重くて大きい割には収納スペースが少ないものが多く、ソフトケースの方が便利です。ソフトケースといっても、パッドが入っていて弓具の保護能力が非常に高いものもあります。
ボウスタンド 基本的にはリカーブと同じです。弓を保護するためにもそろえておくことをおすすめします。
ボウストップ フィンガースリングとボウスリングの2タイプありますが、ボウスリングの方が安心感があります。
アームガード 腕にフィットするものを選びましょう。初心者には、プラスチック製のなるべく薄く幅が広いものがおすすめです。
チェストガード サイズが合ったものを選びましょう。ストリングがひっかからないように服をおさえるためのものです。サイズが合っていないとかえってじゃまになってしまうので、サイズやフィット感が重要です。

ベアボウ

プランジャー 値段による性能の決定的な差はありません。高いものの方が調整する時の操作性がよいといえます。
レスト 調整可能なレストプラスチックの一体成型のものから、矢を乗せるアームの部分を微調整できるものまでいろいろなデザインがあります。初めはシンプルなプラスチックがお勧めです。
ストリング 基本的にはリカーブボウと同じですが、センターサービングの位置や長さに規定があるので、ベアボウ用と指定しましょう。
タブ ベアボウでは、サイトを使わずに取りかけの位置を変えて距離を合わせるストリングウォークというテクニックがあります。ベアボウ専用タブがあるわけではありませんが、ストリングウォークテクニックが使いやすいデザインのものを選ぶとよいでしょう。
ボウストップ フィンガースリングとボウスリングの2タイプありますが、ボウスリングの方が安心感があります。
アームガード 腕にフィットするものを選びましょう。初心者には、プラスチック製のなるべく薄く幅が広いものがおすすめです。
チェストガード サイズが合ったものを選びましょう。ストリングがひっかからないように服をおさえるためのものです。サイズが合っていないとかえってじゃまになってしまうので、サイズやフィット感が重要です。
アロー ベアボウでは矢先でエイミングするので、矢先がハンドルの先に出るように少し長めのものがいいようです。
ボウケース じょうぶな樹脂製のハードケースや移動に便利なソフトケースがあります。練習場までの移動手段や使い勝手を考えて、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。
ボウスタンド 弓は繊細なものなので、立てかけて置くなどはもってのほか。リムに余計な負担をかけないためにも、ボウスタンドに置くようにしましょう。

あるとよいもの

スコアノート 練習の記録を取ることは、上達への近道です。点数の記録だけでなく、的中位置を記録できるものもあります。
アロープラー アローブラー ラバー等でできていて、
矢取りをする時に手が滑るのを防ぐ道具です。
予備弓具 試合に出るようになったら、ストリング、タブ、レストなどの予備を持っていた方がよいでしょう。予備弓具でも射ってみて、的中位置をチェックしておくことが必要。ノックの予備も持っておいた方がよいでしょう。
双眼鏡・スポッティングスコープ 射線に立ったまま、数十メートル離れた的の上の、矢の位置を確認(看的)するのに使います。試合に出るようになったら、風の影響などをチェックしてエイミングの修正を行わないと、的中位置がずれて点数を失う原因になるので、ターゲットでは必需品です。フィールドでは携帯性の高い双眼鏡が一般的です。

Style

基本スタイル

服装は公式試合では服装規定が適用されますが、普段の練習は動きやすいカジュアルな服装でOKです。 シューズは底が平らなスケートボード用のシューズなどが向いています。屋外でシューティングする場合には帽子は必需品です。

アーチェリーに必要な装備としては写真のような、ストリングが引っかかったりしないように服を抑えるためのチェストガード、 腕を守るアームガード、ストリングを引く指先を守るタブ、弓を落とさないようにするためのボウストップなどのプロテクター類、そして矢を入れておくクィーバー(矢筒)があります。

用語解説

①リム:矢を飛ばすエネルギーが蓄積される板状のパーツ。
②ハンドル:弓の中心部分。
③ストリング:弦。リムに蓄えられたエネルギーを矢に伝える。
④サイト:的に狙いを定めるための照準器。
⑤スタビライザー:弓の姿勢を安定させたり、振動や衝撃を吸収したりする装置。
⑥レスト:矢を載せておく台。
⑦プランジャー:指でストリングをリリースする場合に起こる矢の蛇行現象を補正する装置。
⑧クリッカー:矢が一定の引き尺まで引かれたことを知らせるための装置。
⑨矢:アルミニウム、カーボン等で作られたパイプ状のもの。
⑩フィンガースリング:射ったときに、弓が手から飛び出さないようにするためのストラップ。
⑪クィーバー:矢を入れておく矢筒。
⑫アームガード:ストリングが腕に当たらないようにするプロテクター。
⑬タブ:ストリングを引くときに指先を保護するためのプロテクター。
⑭チェストガード:ストリングが服に引っかかるのを防ぐためのプロテクター。
⑮スコープサイト:レンズつきの照準器。コンパウンド用。
⑯カム:ケーブルを巻き取る偏芯滑車。
⑰ケーブル:リムを引っ張るためのストリング。
⑱ケーブルガード:ケーブルが矢と接触しないようにオフセットするためのバー。
⑲ピープサイト:ストリングにつけたのぞき穴。
⑳リリーサー:ストリングを機械的にホールドし、リリースするための器具。