~レジェンド、デイブ・カズンズ選手のフィールドアーチェリーの射ち上げ・射ち下ろしのコツ

投稿:2022年5月8日

こんにちは。渋谷アーチェリー世田谷店です。

山の中に設けられたコースを回りながら、いろいろな設定の的を射つフィールドアーチェリー。矢を無くしそうとか、難しそうとか敬遠されている方もいらっしゃるかもしれませんが、それほど恐れることはありません。基本的な法則を理解しておけば、楽しくコースをラウンドできます。フィールドアーチェリー特有の射ち上げや射ちおろしの的の対処法について、コンパウンド界のレジェンド、デイブ・カズンズ選手のQ&Aを紹介します。ご存じの方も多いと思いますが、デイブ・カズンズ選手はフィールドの世界選手権のアンマークでパーフェクトスコアを射ったこともある、フィールドアーチェリーの達人です。

Q:射ち上げや射ち下ろしの的を射つ時のコツはありますか? 

デイブ・カズンズ選手:私は射ち上げや射ち下ろしの的を射つ場合でも、平地でターゲットを射つ時と同じように的の少し上に弓を構えます。射ち上げや射ち下ろしで弓を水平に引いてから(フルドローしてから)的に合わせに行くという引き方をする人もいますが、私はそういう引き方はしません。 

引き切った時にサイトが的の高さに下りてくる位置に弓を上げられるように身体の角度を調整して引くことで、自然に弓が的の中心に下りてきます。射ち上げ、射ち下ろしに対応するための体の角度角度調整は主に腰から下の下半身で行います。 

弓を水平に引いて、射つ体勢が整ってから射ち下す角度に押手を下げていくという引き方は、私は絶対にしません。思うに、そのような(水平に引いてから角度を合わせに行く)引き方は、当てるために必要な貴重な時間と体力の浪費でしかありません。 

私の中では、平地でターゲットを射つのも射ち上げや射ち下ろしの的を射つのも、弓の引き方は同じです。弓を持ち上げた時にいつも的に対して同じ高さに矢先を合わせるか、サイトを合わせるかしてドローイングしてきます。フルドローした時にサイトが自然に的の中心に下りて来るような高さにつけて引き始めるという点では、平地でも射ち上げでも射ち下ろしでも同じなのです。 

PHOTO COURTECY OF WORLD ARCHERY

きつい角度の射ち上げや射ち下ろし 

射ち上げや射ち下ろしの角度がきつい場合でも、同じ引き方をします。ただし、より身体を使って角度調整をする必要はありますが。最も避けたいのは、腰を折らないで射ち下ろしの的に向かって引いて、弓を的の高さを合わせようとして肩のラインを崩してしまうことです。そういうわけで、腰の位置を調整して上体を射ち下ろしや射ち上げの角度に合わせて弓を持ち上げ、フィールドアーチェリー特有の環境に合わせて平地と同じ状態の肩のラインを再現できるように引いてくるようにしています。 

それでも、極端な射ち上げや射ち下ろしの場合や、つま先下がりやつま先上がりなどの足場の良し悪しによってはどんなに頑張っても(平地と同じ肩のラインを)再現することが難しいこともあります。 

PHOTO COURTECY OF WORLD ARCHERY

フィールドアーチェリーでは時には、足場や姿勢を妥協して、ある程度良い射ができそうな土台が確保できればそれで満足しなければならないことがあります。しかしそれこそが私にとってはフィールドアーチェリーの大きな魅力でもあるのです。フィールドアーチェリーでは、ただ弓をちゃんとチューニングして、精度の高い射ができるようになるだけでは足りません。サイトテープ(距離ごとのサイトの位置がわかる目盛)を作成し、角度に応じて距離をカットしたりするノウハウ、いろいろな地形に合わせて対応できるようなフォームの安定性と順応性など、いろいろな要素が関わってきます。平坦な芝の上で50mを射ったり、明るくて快適な体育館で18mを射つのとは訳が違い、フォームが100%の状態でなくても妥協して(ミスが最小限に抑えられることを計算して)射たなければならなくなることがあるのがフィールドアーチェリーなのです。 

フィールドアーチェリーは総合的な能力が試される究極のアーチェリー競技です。フィールドアーチェリーで経験を積んだ選手は、どんな競技形式でも戦えると思います。 

Q: (つま先上がりやつま先下がりのような)傾斜のある地形では、どうやって弓の傾きを合わせますか?スコープの水準器の泡を見て弓の傾きを合わせますか?それとも自然に合うものですか? 

デイブ・カズンズ選手:斜面での射ち方ですが、例えば私の右側が山で左側が谷の斜面に立っているとすると、私は弓を持ち上げる前に山側に体を倒してから引き始めます。弓を引くにつれて(重力に引っ張られて)自然に身体が谷側に倒れるのに任せれば、的に弓が合った時には自然に弓がまっすぐになる(水準器のバブルが真ん中に来る)のです。まっすぐに立って引いた後に、レベルを真ん中に戻そうと努力するのは得策ではありません。傾いた弓をまっすぐにしようとすると、ハンドルに余計なトルクをかけてしまうことになります。 

デイブ・カズンズ選手は山側に身体を預けて引き始めます

もし私が斜面にまっすぐに立って弓を引いて、谷側に体が引っ張られるのに抵抗しながら弓をまっすぐに戻そうとすると、ハンドルに左右方向のトルクをかけてしまうことになるだけでなく、体自他にも余計な力がかかった状態で射つことになります。そのような状態でリリースすると、押手側と引き手側の押し引きの拮抗していた力が解放された時に、体をまっすぐにするために使っていた力もゆるんで体が谷側に引き戻されてしまいます。そしてミスショットのほとんどが谷側に外れます。山側に外すことはほとんどないでしょう。 

まっすぐに立って引き始めると身体が谷側に引っ張られます

フィールドコースで斜面のポストに立った時に、射つ前に双眼鏡で的をチェックしてみてください。的の中心にどのくらい当たっているか、左右どちらにミスショットが外れているかチェックすると、斜面のポストではほとんどの人が谷側に外しているはずです。 

的前に立ったらまず第一にすべきことは、弓を持ち上げる前に山側に身体を預けることです。そして斜面の重力に身を任せて、弓がまっすぐになるゼロポジションにおさまるようにすること。重力に任せて弓がまっすぐになるゼロポジションにもって来るように引くことによって、理想的な状態で的に向かうことができるのです。 

先日何年かぶりにフィールドアーチェリーの試合に出ました。私はデイブ・カズンズ師匠の教えを守ってコースを回ったのですが、運動不足と練習不足のため途中で太ももが悲鳴を上げて、斜面や射ち上げ射ち下ろしのフォームの調整に下半身をしっかり使っているということを再確認しました。