~レジェンド、デイブ・カズンズ選手のQ&A その4

こんにちは、世田谷店の種部です。
今回はショットエクスキューションがテーマです。ショットエクスキューションとは、エイミング中リリーサーを作動させるために何らかの動きやテンションをかけるわけですが、そのプロセスのことですね。その射の成否を分ける重要なステップですが、サイトの動きや試合のプレッシャーの影響で、最もストレスが大きい時間帯でもあります。デイブ・カズンズ選手は、どいう対処しているのでしょうか。
Q:ショットエクスキューションの際に重視していることは何ですか?伸び合ってリリーサーを切る際に何に意識を集中させていますか?
デイブ・カズンズ選手(以下Dと表記します):それを説明するには、まず私の射のルーティンを始めから通して話しておいた方が理解しやすいと思います。( 実際に弓を引き起こす前に)まず第一にやることは、自分が達成したいと思っている目標をヴィジュアライズする(視覚化してイメージする)ことです。それはもちろん、私の矢がXリングの真ん中に刺さることですね。
 そして次に、その射を達成する時のサイトピクチャーをイメージします。テンションをかけていくのでサイトが動いていても、10点のリング内で動いている限り気にしません。的のどこか一点にピタッと止めている必要はないのです。サイトが動いていても、的の中心に向かって戻ってくる限りテンションをかけ続けて行きます。
 次に意識するのはドローイングの際の引手側の肩のブロックが正しく回転することです。引手側の肩甲骨が大きく回って(押手側の肩甲骨に向かって)寄ることによって、引手側の力が蓄えられます。子の肩甲骨の動きによって、肩甲骨の下にある筋肉が使われるのです。押手側の肩甲骨に向かって、引手側の肩甲骨がドローイングとともに大きく回って下がりながら寄って行き、テンションがローディングされます。

 次に、引手がアンカーポイントに到達し、スコープとピープを同心円に見た時点で、リリーサーにエンゲージし始めます。リリーサーがヒンジタイプでも親指トリガータイプでも、リストタイプでも、(この時点で)リリーサーを作動させるための動きにエンゲージし、じわじわと力をかけ始めます。
引手側に蓄積されたテンションがあとのことは全てやってくれるので、この後はリリーサーを切るための動きやドローイングを続けること、テンションをかけることを意識することはありません。
 この段階で、(サイトが)的の真ん中に下りてきたタイミングで、意識を押手側に集中するように切り替えます。そして押手のドライブを強めていきます。(押手のドライブは)人によって呼称は違うかもしれませんが、フォームの的側の半分と的が正しく繋がる感覚のことです。(伸ばした押手の)腕の背中側にある上腕三頭筋によって、押手の肩が的に向かって低く保たれた良い姿勢が整えられます。私の押手は少し柔らかい状態で押手の的へのドライブを開始します。
 この時私は、押手の肩で押そうとしたり、腕を伸ばそうとしたりしていません。その姿勢を保って、腕の背中側、上腕三頭筋のテンションを加減して 弓を持ち上げて的に向かうようにキープしているだけです。そして(この時押手にかかる力は)引手側にかかっている力と拮抗しています。この過程で、「機会の窓」が開いている間に、十分な力が残っている状態で、自然に(リリーサーが切れて)矢が発射されます…調子のよい日には。ダメな日もありますが。 
Q:ということは、リリーサーを切るタイミングを意識してはいないということでしょうか?
D:そうです。リリースは自然に起きます。アンカーに到達する前に力を蓄え、リリーサーを切る動作にエンゲージし、押手をドライブするというステップを積み重ねることによって、これらの3つのステップが一つの流れとなって、「機会の窓」が開いていて、力がみなぎっているうちに自然に発射されるのです。
  そうは言っても、日によってもそうですが、ときには同じエンドの中や同じ試合の間の1射、1射の単位で、その日に全体としてうまく機能するために、ひとつひとつのステップの重要度やどこをどのくらい意識して動作するかといったことは微妙な調整を要することがあります。
 (射の成否にかかわる)いろいろな要素が浮んでいる中から一つ取捨選択しているのですが、このように状況に応じて注意が必要な要素と気にしなくて良い要素を見極めて、流れを止めないで射を遂行するために必要なことにだけ集中する状態を作る必要があるということは、エクスキューション(リリーサーを切るための伸び合い)のスタイルやリリーサーの切り方が異なるアーチャーであっても当てはまることです。(ショットエクスキューションの際に意識を集中させる対象は)常に流動的なものと言えるでしょう。

ローマトロフィー2017のカズンズ選手 PHOTO AND MOIVIE COURTESY OF WA

Q:(リリーサーは意識して切らないということでしたが)親指トリガータイプのリリーサーの、トリガーの硬さやトラベル はどう設定していますか?ヒンジ・リリーサーのスピード調整はどうしていますか?
D:私が(講習会などで)誰かに教える時には、トリガーのテンションをかなり重めに設定し、トラベルは最小限に設定するようにしています。リストタイプ、親指トリガータイプ、薬指トリガーだけでなくヒンジタイプでも、リリーサーのタイプに関わりなく、リリーサーの作動機構の動き(パーツが擦れる感触)が感じられることは命取りになります。
 パーツが動く感触にはアーチャーをびくっとさせる何かがあって、射つための作業を続けられなくなってしまいます。アーチャーは(リリーサーの内部パーツの)軋みやずるずると動く感じを拾ってしまうと不安になったり、「お、切れるかと思ったけどまだなんだ。じゃあまだ引き続けないと」と意識してしまったりするために、動きが中断されてしまうのです。
 そういう訳で、私はまずリリーサーのトラベルを最小限、全く知覚できないくらいに設定します。そしてスプリングを交換したり、スプリングのテンション調整をしたりして、自然にリリースされるのにちょうど良い強さに設定します。私の場合、トリガーテンションはかなり軽い設定になっていますが、これはあくまで私のリリーサーへのコミットのやり方に合わせたものです。一方で、誰かに教える場合にはトリガー・トラベルは最小限に設定し、トリガーのスプリングはかなり硬めに設定するようにしています。これはアンカーリングしてリリーサーにエンゲージする時に、親指や人さし指をトリガーにかける際に、ある程度のテンションがかかった状態でトリガーに指をかけられるようにするためです。触れただけで発射されたらどうしようと心配をすることなく、指をかけてリリーサーにエンゲージできるようにするためです。(トリガーのテンションを硬めにすることによって)「おっ、トリガーに触れたぞ」と意識しすぎたり、トリガーに最初に触れる瞬間にドキドキしたりしなくて済み、ためらうことなく安心して指をかけることができるのです。
 ヒンジ・リリーサーの場合も、誰かに教える場合にはかなりスピードを遅くして、かなり(リリーサーの角度を)回転させるような設定にしています。そうすることによって、リリーサーを回転させ始めたとたんに発射されるんじゃないかとびびることなく、リリーサーを操作している感覚をしっかり感じられ、リリーサーにエンゲージ(リリーサーを切る動きを開始すること)することを意識し、リリーサーを回し続けることを感覚的に理解できるようになります。
 ヒンジ・リリーサーのクリッカーについて説明しましょう。私はヒンジ・リリーサーを使用する場合、いつもではありませんがクリッカーを使用することがあります。私が知る限り、私のようなクリッカーの使い方をしているアーチャーは他にはいないと思いますが、誰かに教える場合にはこのやり方を教えるようにしています。
 多くのアーチャーがフルドローしてサイトをつけて、サイトが良い位置に来て動きが収まったところで、「よし、リリーサーを切り始めよう」と思って引っ張ったり、ひねったりするなどしてクリッカーを鳴らしています。そしてクリッカーが鳴ると、黄色い注意信号が点滅し始めたみたい思っているアーチャーが多いようです。クリッカーが鳴った後はリリーサーが切れるポイントにぎりぎりまで近づいていていつ発射されてもおかしくないので、「気をつけろ、落ち着け」と警告されていると思っているようです。(このやり方では)サイトの動きがきになって、不安や焦り、恐れといった感情がもたらされることになります。私にとっては、このようなクリッカーの使い方はパニックを招くだけのように思います。
 私はサイトが的につく前にクリッカーを鳴らしてしまいます。ドローイングしてピープとスコープを覗いたら、サイトを的に下ろし始めるタイミングで意識的に指でリリーサーを回転させてクリッカーを鳴らします。
 (クリッカーが鳴るタイミングは)だいたい狙おうとしている的の上の端にサイトが来た時ですね。だから、インドアの縦三つ目の的を狙う場合は、必ず上から順番に1射目、2射目、3射目と射って行くのですが、それぞれの的の同じポイント、当てようと思っているところ(10点)の少し上でクリッカーが鳴ります。
 ということは、私の場合は、サイトが的の真ん中に納まるか前の段階で黄色い警告ランプが点灯してしまっているので、動き続け、テンションをかけ続けることを妨げられることはありません。もし、私がサイトを的につけてからクリッカーを鳴らしたとしたら、何も起きません(動けなくなってしまいます)。(そのタイミングでクリッカーが鳴ると)終わりが近づいていることを知ってしまい、リリーサーにちょっとでも力をかけたり動かしたりしたら、サイトが動いてしまいミスショットにつながるということを知っているからです。だから私はサイトが的につくはるか前に(リリーサーへのエンゲージを)スタートしているのです。
 私は時々クリッカー無しでヒンジ・リリーサーを使って射つことがありますが、その場合も(クリッカーを使う場合と)同じようにリリーサーを回し始めて、リリーサーへのエンゲージはサイトが的の真ん中につくはるか前です。確かに、(クリッカー無しでこのタイミングでリリーサーにエンゲージし始めるのは)勇気がいることと言えるので、しっかり練習を積んでマスターしなければなりません。念を押しておきますが、私にとってはこのやり方が合っているということです。
カズンズ選手の話の中で”window of opportunity”という言葉が度々出てきます。絶好の機会という訳が一般的なのですが、エイミングが長くなると機会がどんどん失われていく(窓が閉まっていく)感じを出したかったので、「機会の窓」と訳しました。さて、次回はみんなが気になっているチューニングについて取り上げます。お楽しみに!