~CPL SHOOTING TIPS:エイミングってサイトピンを止めることなの?

投稿:2026年4月5日

 世田谷店の種部です。アーチェリーでエイミングというと、「サイトピンを的の中心に止めること(もしくは止めようとすること)」と思っている方が多いかもしれません。私がアメリカでアーチェリーコーチ資格を取った際の講師、ディック・トーン氏は、「エイミングはテクニックではない。サイトピンを止めようとするより自分のリズムでリリースすることを優先すべき」とエイミングについて説明していました。そして私がコンパウンドを始めたばかりでターゲットパニックになった時に教わったのが、トーン氏と同じような考え方に基づいた、エイミングしない(サイトピンを止めようとしない)トリガーコントロールの方法でした。
 そもそもスコープのドットを的の真ん中に止める(あるいは止めた状態を維持する)ことは不可能で、ドットは常に動いているものなので、ただ的を見てドットの動きを観察しながら自分のリズムで(トリガーを切って)射つことが再現性の高いパーフォーマンスをもたらすという考え方です。

左:ジェイ・バース氏(1988ソウル大会ゴールドメダリスト) 右:ディック・トーン氏

 トーン氏は、人間はヴィジュアルフィードバックという、視覚情報に応じて運動を調整する機能を備えているので、サイトピンを的の中心にキープする作業は潜在意識に任せるのが一番効率が良く、精度が高いと言っています。アーチェリーではサイトピンの動きに応じてフォームのバランスを調整して、サイトピンが的に戻ってくる動きを無意識に行うことができるということです。
 実際、無意識のエイミングでトリガーを切るようになって、ターゲットパニックが発症しなくなっただけでなく、ターゲットパニック前よりもパフォーマンスが飛躍的に向上した(フォームや弓具は同じまま)のですが、スコアの変化よりも大きな違いを感じた点は、エイミング~リリースまでのストレスが減ったことでした。エイミングを意識していた時は魂を削る思いをしながらトリガーを切っていたのが、エイミングを意識しなくなってからはトリガーを切ることも意識することなく、リラックスしてリリースできるようになって、ストレスを感じなくなり、アーチェリーってこんなに楽なんだと思いました。練習と試合でのパフォーマンスの差もなくなり、むしろ試合で少し緊張感がある方が、パフォーマンスが良いと感じるくらいになりました。2007年に全日本選手権の準決勝で、70m12射マッチの日本記録118点を射った時も、魂を削るような思いをすることなくリラックスして射てました。

 と言っても… エイミングしない(ドットを10点にキープしようとすることをやめる)なんて、上手く行くのかにわかには信じがたいという方も多いかもしれません。また、実際に無意識のエイミングをやってみようとしたけれど、上手く行かなかったという方もいらっしゃるかもしれません。私自身はターゲットパニックから脱却する過程で「的を眺めてドットの動きを気にしないで射つ」という射ち方に自然に移行したので、具体的にどうすれば無意識のエイミングをシューティングのルーティンに取り入れられるかについては言語化が難しいと感じていました。
 最近SHOT IQというコンパウンドのトップアーチャー、ボディ・ターナー選手の父親でコーチでもある、ジョエル・ターナー氏コントロールド・ショット・プロセスというメソッドで、エイミングとトリガーコントロールを切り離して行う方法を教わったので、それを基に、どうすれば無意識のエイミングが行えるのか解説していきます。 

エイミングを再定義

 エイミングはドットを的の中心に合わせた時点で終了するというのが、SHOT IQのルーティンです。シューティングの流れに沿って見て行きながら、エイミングという作業を考えると理解しやすいと思います。コンパウンドボウで、フルドローの体勢に入ってリリースするまでのルーティンは次のようなものです。
シューティングの流れ(シューティングのルーティン)
①カムが回り切って止まる
②スコープをゆっくり下して、ドットを的の中心に合わせる
➂ドットを的の中心になるべくキープしたまま、ストリングを鼻につけてピープサイトを除く
④この時引き手は顔の定位置に接触している。
⑤ピープホールと的を同心円に重ねて、ドットが的の中心にあることを確認する。
⑥トリガーに指をかける
⑦伸び合う、引き手の肘を回す、リリーサーにかけた指を絞るなどの動作でトリガーを切りに行く
⑧トリガーが切れてリリース

 エイミングという作業は①でカムが止まった時から、ゆっくりスコープを下ろしてドットを的の真ん中につけることと⑤でピープホール-的が同心円に重なり、スコープのドットが的の中心にあることを確認するところまでです。その後はトリガーを切ってリリースする作業(トリガーコントロール)で、この段階では的とドットは「ただ眺めているだけ」の無意識の状態です。美術館でお気に入りの絵を眺めているようなイメージでしょうか。ただ眺めているだけではドットが真ん中に止まらない、と思われるかもしれませんが、前述のヴィジュアルフィードバックの機能によって自動的にドットは真ん中に戻ってきます。①から⑤の作業をゆっくり、丁寧に、正確に行うことで、ドットを的の真ん中にあるという目標を潜在意識に認知させて、ロックオンしたような状態を作ることができます。

 ⑥から⑧はトリガーコントロールの段階で、意識はトリガーを切るための動作に意識を向けます。これはトリガーに意識を向けることではなく、トリガーを切るための動作、「引き手の肘を回す」、「押手を伸ばす」、「リリーサーのハンドルにかけた指を絞る」といった作業に意識を向けることです。意識を自分が行うべき作業に向けることによって、ドットの動きは潜在意識によって調整される状態になります。

的の真ん中=10点ではない

 世界ランキングNo.1のマシアス・フーラートン選手が、ホールディング中のファイバーピンの見え方の動画をアップしています。ファイバーピンの動きは非常に小さく、さすがトップアーチャーです。もちろん潜在意識にドットの動きの調整を任せたら、誰でもすぐにフラートン選手のような精度が出せるわけではありません。練習を重ねて、フォームの完成度が高まり、ホールディング中の姿勢や押し引きのバランスを調整する能力が高まるにつれて、自然に小さい範囲で一定の動きをするようになります。

トップ選手のドットの動きは小さく、一定

 ビギナーと中級者、トップ選手の間では、シューティングフォームの完成度や調整能力が異なるので、「的の真ん中」の定義が異なって良いと思います。コンパウンドを始めたばかりのアーチャーにとって「真ん中」は赤以内と考えて、その範囲内でドットが動いていればどんどん射って良いということです。最初からドットの動きが10点以内どころか、9点以内にすらにある必要はないのです。ドットが8点にある時にトリガーが切れて矢が8点に当たったなら、それは良い射ができたということです。この方法で練習していると、ドットが動いている範囲よりも的の中心に近い方に当たるようになることに気が付くと思います。それは、潜在意識にドットの動きの調整を任せられているという兆候です。

初めのうちはドットの動く範囲が大きく、動きのパターンも不規則

ドットを真ん中につけようとすることの問題点

 ドットを的の真ん中につけることが、エイミングと考えているアーチャーは、「的の真ん中にドットをつける」という動作で反射的にトリガーを切るという、射ち方になってしまいます。この方法でも良いスコアを出すことは可能ですが、ドットが真ん中に来た瞬間を狙ってトリガーを切る作業の指令を出すことは、ストレスが大きい(試合でプレッシャーがかかった場面で失敗しやすい)ことと、ドットが的の真ん中につく瞬間を身体が「予測」するようになって、勝手に反応してしまう恐れがあるという問題があります。「予測」というのは、的の真ん中にドットが来た瞬間に、身体がリリースしたことを予測して実際にリリースする直前に力を抜いてしまい、ドットが6時方向に落ちる「ディップ・バング」という現象につながります。ドットが10点についていたのに、射つ瞬間にドットが下がって6時の9点を射ったという経験があるアーチャーは多いのではないでしょうか。それが、身体がリリースを「予測」してしまうことによって引き起こされる「ディップ・バング」なのです。この状態が悪化すると、いわゆる「ターゲットパニック」と呼ばれる状態に陥ってしまいます。

テクニックのお悩みにはCPL

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参考:SHOT IQ